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ある時、監獄のなかでこの絵の前に立っていると、またもや看守たちが退屈な召喚状を持ってきて、私を幸せな仕事から引き戻そうとする。そこで私はこうした営みすべてに対し、この情け容赦もない面白みのない現実に対して疲労と吐き気のようなものを感じる。とうとうこの苦しみを終らせる時だと思われる。邪魔されずにこの無邪気な芸術家の遊戯を行うことが許されないとなれば、自分が生涯何年にも渡って捧げてきたあのもっと真剣な術を使うしかなかった。魔術なしにはこの世は耐え難い。

 

私は中国の魔法の規則を思い出し、しばらくの間呼吸を止めて立ち、現実という妄想からわが身を解き放つ。それから看守たちに向かって、絵の中の汽車に乗って探すものがあるので、しばらくの間辛抱して欲しいと頼む。彼らは心得顔で笑う。私の頭がおかしくなったと思って。

そこで私は小さくなって、絵の中に入って行き、小さな汽車に乗り込み、この小さな汽車と一緒に黒い小さなトンネルの中に入って行く。しばらくの間まだ丸い穴から綿くずのような煙が出てくるのが見える。やがて煙は次第に消えてなくなり、それと共に絵全体が、そして絵と共に私も消え失せる。

 

茫然自失して看守たちはとり残される。

 

* Hermann Hesse, Kurzgefasster Lebenslauf, in Gesammelte Werke in 12 Baenden, 6. Bd., S. 391 ff.

© Suhrkamp Verlag, Berlin